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2011/10/23

「基礎学力補充」も楽しくできます

 『たのしい授業』1983年11月号に収録されたものです。

 名古屋で定時制の工業高校に勤務していた頃のレポートで,私のレポートが市販の雑誌にはじめて掲載された記念すべき?レポートでもあります。(^^ゞ


「基礎学力補充」も楽しくできます 一定時制高校で算数ドリルー
                                伊藤 守 元名古屋市立第2エ兼高校

  定時制高校には色んな生徒がはいってきます。しかし,その圧倒的多数が,色んな意味で全日制高校から「落ちこぼれ」てきた生徒です。今の定時制には,「田舎から都会へ集団就職してきた子どものための学校」というイメージはまったくなくなっているのです。中学校の内申書でいえば,オール1の子とも,又はそれに近い子どもがかなりの割合を占めています。
 だから定時制高校の教師は,よくいいます。
 「生徒の学力に落差がありすぎて授業がやりにくい」
 「小数も分数もわからない生徒に何を教えたらいいのか?!」
  そこで出てくる発想が
  「基礎学力補充」のための授業
ということになります。でも,そういった発想に,ポクはなんとなく異和感を感じてしまうのです。生徒の意欲とほとんど無関係のところでそれが発想され,論議され,実践されているように患えてしまうからです。そんなことを思うのは,ポクだけでしょうか。
 とはいえ,ポクだって「読み・書き・そろばん」を基礎学力と考えれば,それは気になります。そこで「それが本当に子どもにとって大切なものなら楽しくできるはずだ」という仮説をたてて,4年生の高校最後の約1カ月位の授業(9~10回)を,以下のようにやってみました。
 3学期にはいった最初の数ⅡAの授業。
 「2学期までに微積分が終わった。教ⅡAで微積分が終わったということは,そのほとんどすぺてを終わったといってもいいくらいだ。さて,学校で数学を勉強するのは,ほとんどの人がこれで終わりだと思うけど,あと1カ月くらい何をやろうか」(ポクが受けもっている2クラスのうち,2人だけが大学の2部に進学しました)
 こういって,次の選択肢を用意しました。
 ア.微積分の復習
 イ.行列
 ウ.確率
 エ.「読み・書き・そろばん」の「そろばん」にあたる事柄の復習・ドリル

 さて,その結果は,圧倒的多数がエでした。そこでポクは,こんなルールをつくりました。
①ポクがあらかじめ5枚ほどのプリントを用意しておく。(内容は,『たのしい算数(かならずわかるシリーズ)』麦の芽出版会の「小学3年生」からはじめました)
②生徒はそのうち最底1枚はやること。
③1枚目をやったら,ポクに提出する。ポクは○をうつ。
④2枚目,3枚目を見て「確実にできる」と思ったらパスして4板目をやる。つまり,1枚やったら2枚までパスできる。
⑤次の時間は,まったく新しいプリントからはじめる。つまり,1回の「授業」で1単元ずつ進む。
 生徒はかなりノッてやりました。「ドリルなんて強いるもの,強いられるもの」というイメージが強かったポクにとって,この授業は,そのイメージを一掃してくれるものでした。ドリルだって,やり方次第なんですね。誰が主人公か,誰が主人公になるかということなんですよね。
 9時間あまりのドリルの「授業」が終わってから,「面白かったか」「役に立ったか」の評価(アンケートをとりました。

 1 面白い        20
 2 どちらでもない    5
 3 つまらない      1
   (無答 6)

 ア.役に立つ,ためになる 18
 イ.どちらでもない      9
 ウ.役に立たない      12
     (無答 3)

(1,ア)の理由
○多少忘れた計算もあったので思い出し,よかった。姉のガキに恥をかかなくてすむ。
○実用的なおかつ生活にやくだつ。
○小学校の復習の感じで楽しかっ たこ
○小学校のときぜんぜんタメだったから。
○割算がなかったら,もっとよかったと患う。テストには出さないでほしい。
○あたまをつかった。
○面白いから役に立つ,ためになるから。
○日ごろよくつかうから。
○計算も久しぶりにやると面白い。

(1;イ)
○やっとると頭がいたい。
(2,イ)
○忘れていたこともあるし,知りすぎていだとともあったため。(2,ウ)
○日常にあまりつかわないから。
(1,3とア)最初は面白いが後半はとてもつまらない。しかし多少の頭のトレーニングにはなったと思う。あれくらい計算できれば安心して買物ができる。
        *
 4年生の学年末考査のときは,問題のおしまいに,こんな欄を設けておきました。
☆4年生になって,1学期に微分,2学期に積分,3学期に計算ドリルをやりました。それぞれについて,面白さと役に立つ度合を○△ ×で表わして下さい。
☆1年間の授業の申で,特に印象に残った授業等があれば書いて下さい。

       *
 この結果は下のとおりです。

        面白さ         役立つ度合
        ○   △  ×    ○  △  ×
微分      8  14  7     5  14  8
積分      9   6  9     6  14  7
計算     17  10  1    23   3  1

○やはり微分・積分。
○最後のドリルがとてもむずかしかった。
○3学期がたのしかった。さいごもくるしい数学でした。
○計算ドリルの授業はわすれかけていたことをおもいだす。
○3学期やった計算ドリルがいちばんよかった。
○印象に残ったことはないけど,ぼくにとってはいい基礎ができた。わきあいあいやれたので楽しかっ た。
○あんたもすぐおこるけど,しょう がないね。俺達がそうさせるのだ から。でも言いたい事があったらはっきり言ってはしかった。口の中で言ってるだけで……。でも楽しくやれたよ。
○高校にきてまで計算ドリルをやるとは思ってもみんかった。
○3学期にやった,簡単そうでややこしい計算問題。
○3学期の小学校の問題。
○計算ドリルは頭が痛くなってくるので,もうちょっとむずかしいのを数少なくやってほしい。
○やっぱり3学期だけれど,最初はかんたんだと思っていたのに,あんがいまちがえたなあ。
    *  *  *
 はじめは「小学生の問題なんか」と怒る者も出るのじゃないかと少し心配もしましたが,実用性が誰にも納得できるからか,予想外の好評で驚きました。
            (掲載当時東京江戸川養護学校高等部)


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